シネクティクス(Synectics)法とは、「異質なものを結びつけ統合する」 という意味のギリシア語から来た言葉であり、
ハーバード大学のウィリアム・J・ゴードン(William J. J. Gordon)により考案されたアナロジー思考の手法です。
シネクティクスの仕組みは異質馴化(いしつじゅんか)と馴質異化(じゅんしついか)という2転から成っています。
異質馴化とは、自分にとって全く未知のモノをヒントに自分の問題解決を着想することであり、馴質異化とは、自分にとって既知のモノを、着眼点を変えることにより、新しいヒントを得られるという考え方です。
シネクティクス法ではこの仕組みの具体的な実践方法として、以下の3つの手法を提示しています。
直接的類推法(direct analogy)
直接的類推法とは、対象と直接似たものを探し、そこから応用できるヒントを探る手法であり、特に自然界や生物からのアナロジーに有効です。
ボーイング社の事例
有名な事例として、ボーイング社は鳥の翼の形状からヒントを得て飛行機のフラップを開発したといわれています。
クモの糸を参考に新素材を開発

クモの糸は強さは鋼鉄の約5倍で、もし直径1センチの太さの糸でクモの巣を作れば、空中に飛んでいるジャンボジェット機を止めることさえできるほどで、非常に優秀な素材として古くから注目されており、近年日本のベンチャー企業が類似した構造の素材の量産に成功しました。
これなどは、既にある優秀な素材を参考に新しい素材を開発するというダイレクトアナロジー的発想といえるでしょう。
蜂の巣の構造を応用する
自然の作り上げた優秀な構造物としては蜂の巣の「ハニカム構造」が挙げられます。
蜂の巣の構造の強さの応用により、新幹線の床、人工衛星の壁、飛行機の翼等々、様々なものが改良・実用化されています。
主観的類推法(personal analogy)
主観的類推法とは、対象になりきることにより、その仕組みや働きのヒントを探る手法です。
例としては、顧客になりきってサービスを考える、高齢者になりきって施設のバリアフリー化を検討する、機械になったつもりでスムーズな動きを実現する方法を探ってみる、といったものです。
視点強制による発想力強化について
先述の高齢者になりきる方法としては、あえて身体の自由を制限することで高齢者の感覚に近い視点を強制的に得る方法があります。上記の写真はその一例です。(株式会社ヤガミHPより引用)
象徴的類推法(symbolic analogy)
抽象的類推法とは、対象をシンボリックな文字列に変換し、そこから連想してヒントを得る方法です。また、空想の産物から連想してヒントを得ることもできます。
長引く会議を解決する

会社の会議がいつも長引き無駄が多い気がする場合どうすればよいかを、この抽象的類推法で考えてみましょう。
まず会議というワードを書き、それに対して好ましいワードを連想していきます。
「シンプル・会議」「ショート・会議」「コンパクト・会議」「30分・会議」「リミット・会議」etc…
この中で仮に「30分・会議」という組み合わせが面白いと思ったとしましょう。
これを言葉通りに解釈すると、「(何があっても)30分で終わらせる」会議ということになります。業種や会議のテーマによって状況は異なるとはいえ、もし毎回3時間以上かかっていた会議が30分で終わり、なおかつ実のある議論ができるなら、これは非常に魅力的ですね。
そこからは、「それでは、実際に30分で終わらせるには?」という検討に入っていきます。
「大きいタイマーを表示して常に時間を意識する」「優秀なファシリテーターを置いて、進行を適切に行う」「前もって議題を社内SNSで共有する」「意見は前もってファシリテーターに概要を伝えておく」等、会社の実情に応じて様々なアイデアが考えられそうです。
予め抽象的類推法で書き出したキーワードが目の前にあるため、発想が促進される効果が期待できるわけですね。
このように対象に適した類推を行う事で、新しい発想を得られる可能性が高まります。
アナロジー思考は発想法として非常に面白く奥が深いので、アイデア出しの際は是非使ってみてください!